第1章
命という贈り物
「すべての物語は、それを語る人が生まれるずっと前から始まっている。」
誰か一人に感謝を伝える前に、私はまず「人生」そのものに感謝したいと思います。
これから三十五章にわたり、私という人間を形づくってくれた人々、場所、出来事、そして教訓に感謝を伝えていきます。しかし、教師も、コーチも、海兵隊も、恩師も、友人も、妻も、子どもたちも、孫たちも存在する前に、私にはただ一つ、「この世に生まれる機会」がありました。
私の物語は、私が最初の息を吸うずっと前から始まっていました。
1985年の冬、母は自ら望んだ人生を生きていました。27歳だった母は、ニューメキシコ州サンランドパーク競馬場で競走馬の調教に携わり、古いフォードのピックアップトラックの荷台に載せた手作りのキャンピングカーで暮らしていました。自立心が強く、冒険を愛し、馬の背に乗り、果てしない道を進んでいるときが何より幸せな人でした。競馬場は単なる職場ではなく、誰もが顔見知りで、同じ厳しい日々を分かち合う共同体でした。
その中に、一人の勤勉な若いホースマンがいました。
エステバン・ラミレス。
二人は友人でした。
互いの仕事への姿勢を尊敬し合い、
すれ違うたびに軽く冗談を交わし、
少しだけ恋心を抱いていました。
まさか、ごくありふれた朝の出来事が、二人の人生を永遠に結びつけることになるとは、誰も想像していませんでした。
その日は、いつもと変わらない朝でした。
競走馬の運動を終えた母は、一番大切にしていた青毛の牝馬「フェイ」に鞍を載せました。周りの人にとってフェイは一頭の馬に過ぎなかったかもしれません。しかし母にとっては家族でした。信頼できる相棒であり、未来への夢であり、自分だけの血統を築く第一歩になると信じていた存在でした。
別の厩舎へ向かう橋を渡っていたとき、母はゴルフカートで並走していた友人に振り向いて話しかけました。
その瞬間――
「パンッ」という破裂音が響きました。
高圧送電線が切れたのです。
母は、それが自分の脚に触れる感覚を覚えました。
馬がつまずいたのだと思い、とっさにフェイを前へ促しました。
しかし、フェイはその場で崩れ落ちました。
口元から煙が立ちのぼっていました。
ほとんど一瞬で命を落としてしまったのです。
何が起きたのか理解できないまま、母は馬から降り、誰かがフェイを運び去る前に鞍だけでも外そうと手を伸ばしました。
その瞬間でした。
一人の若いホースマンが全力で駆け寄ってきました。
私の父です。
誰よりも早く危険に気づいた父は、母の腕をつかみ、力いっぱい引き離しました。
切れた送電線は、まだフェイの体の上に乗ったままだったのです。
もし母がフェイに触れていたなら、母もその場で命を落としていたかもしれません。
しかし、母は生き延びました。
人生には、すべてが変わる瞬間があります。
私たち家族にとって、それがこの出来事でした。
勇気ある行動から始まった二人の関係は友情となり、
友情はやがて愛へと変わっていきました。
同じ競馬場で働いていただけの二人が、思いもよらない未来を共に歩み始めたのです。
しかし、人生はまだ新たな道を用意していました。
母には、もともと別の夢がありました。
カナダを旅し、ヨーロッパを巡り、自由な放浪の人生を続けること。
父と出会う前には、将来結婚するかもしれないと思っていた男性もいました。
今になって母はよくこう言います。
「人生は、ほんの些細な偶然で大きく変わるものなのよ。」
一本の切れた送電線。
命を捧げた一頭の馬。
危険から逃げるのではなく、危険へ向かって走った一人の青年。
数か月後、1986年7月、母の誕生日に両親は一緒にその日を祝いました。
その夜が終わる前、母は父にこう伝えました。
「もし今夜愛し合ったら、私はきっと妊娠すると思う。」
父は笑顔で答えました。
「それでいい。」
そして九か月後――
1987年4月1日。
私はこの世に生まれました。
しかし、私の心を最も動かすのは、生まれた日ではありません。
その後の出来事です。
母は妊娠を知ったあとも旅への想いを捨てられませんでした。
リュック一つを背負い、母になる前にもう一度家族へ会いたいと願い、ニューヨークを目指してヒッチハイクの旅に出ました。
雨に濡れた高速道路を歩き、
道端でタープの下に眠り、
お腹の中の命を抱えながら、先の見えない旅を続ける中で、
母の中で何かが変わりました。
もう、自分一人のためだけに生きているのではありませんでした。
これからは、私のために生きるのだと。
私がまだ一度も目を開ける前から、
一度も会ったことのない誰かが、
すでに私の未来を守ってくれていたのです。
この物語を振り返るたび、私は一つの深い真実に気づかされます。
いつか築くことになる友情も――
共に海兵隊で任務に就くことになる仲間たちも――
人生で学ぶすべての教訓も――
乗り越えてきた数々の試練も――
そして、いつの日か私たち家族の物語を受け継いでいく子どもたちや孫たちも――
そのすべては、
もし違う結末になっていたかもしれない、
ほんのいくつかの瞬間へとつながっています。
一本の切れた送電線。
勇敢な一人の青年。
かけがえのない一人の女性。
忠実な一頭の馬。
恐れではなく愛を選んだ決断。
そして、誰にも予想できなかった未来を受け入れる勇気。
この章は、単に私がどのように生まれたかを語る物語ではありません。
私が生きる機会を得るまでに起こらなければならなかった、数え切れない奇跡の積み重ねについての物語なのです。
お母さん、お父さん。
共に未来を選んでくれて、本当にありがとう。
そして、母の心から決して消えることのなかったフェイへ。
あなたが私たち家族の物語の一部でいてくれたことに、心から感謝します。
最後に――
人生そのものへ。
この命という贈り物を、ありがとう。